相続税の土地評価とは?計算方法や相続税への特例、注意点などを解説

税金・評価・法令

掲載日:2025年11月28日
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相続税の税額に大きな影響を与えるのが、土地評価です。土地評価は面積や路線価、補正率などによって算出され、土地の状況によっては減額の特例の対象となります。

そのため、土地評価を自分で計算する際には、相続税路線価や評価倍率、土地の形状補正、地目・利用状況などさまざまな事項を確認しておく必要があります。

本記事では相続税の土地評価の概要から、相続税に関する特例や、計算方法と自分で計算する際の注意点を詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

目次

相続税と土地評価

相続税は、相続財産の評価額をもとに算出される税金です。

一般的に土地は相続財産の中に占める割合が高く、相続財産の評価額に与える影響が大きいです。相続財産に土地が含まれる場合、相続税の税額は土地の評価で大きく変動します。

相続税計算における土地の評価は「時価」ではなく、国税庁の基準に基づく「相続税評価額」で行います。

相続税評価額の算定方法を理解することで、相続税額の目安を把握できるようになるでしょう。

相続税申告の際は、申告書に土地の評価額を計算するために作成した「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」を添付することが大切です。

参照:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」
参照:国税庁「財産評価関係|B2-5 土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」

土地評価の計算方法

土地評価の計算方法の流れは、以下のとおりです。

  • 面積を調べる
  • 路線価を調べる
  • 補正率を調べる
  • 計算式のとおりに計算する

ただし、ここで紹介する計算方法で算出した評価額はあくまでも概算です。正確な評価額を算出するときは、専門家への相談をおすすめします。

では、参考として土地評価の計算方法を詳しく見ていきます。

面積を調べる

土地の面積は、登記事項証明書や地積測量図で確認できます。

登記事項証明書とは、土地の面積や所在、現況、抵当権などの権利関係などが記載された公的書類で、法務局の窓口やオンラインで申請が可能です。

地積測量図とは、土地家屋調査士などが作成した、正確な面積や形状、境界を示す公的な図面で、法務局で申請します。

ただし、登記簿面積と実測面積が異なる場合はトラブルの原因になりかねません。たとえば、相続人の間で「どの面積を基準にするか」で争いになるケースもあります。必要に応じて土地家屋調査士に依頼するなどして境界確定測量を行い、登記を修正するのが望ましいです。

また、相続トラブルの防止や売却手続きの円滑化のために分筆(土地を複数に分割すること)や合筆(複数の土地を1つにまとめること)が完了しているかどうかも確認しておきましょう。

参照:法務省「登記 -不動産登記-|不動産登記のABC」

路線価を調べる

路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額で、国税庁のサイトにある「路線価図」で確認できます。路線価は、相続発生日の年度に公表された価額を使う必要があります。

路線価が示されていない地域は「倍率方式」で評価を行います。倍率方式とは、土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算出する計算方法です。

参照:国税庁「財産評価基準書|路線価図・評価倍率表」
参照:国税庁「倍率方式による土地の評価」

補正率を調べる

土地評価には、間口が狭い、奥行きが長いなど、形状によって補正が必要です。二方路線影響加算率、がけ地補正率、奥行価格補正率など複数の補正率があります。

補正率を適用しないと誤った評価額になりかねません。土地評価が高めに算出されてしまう場合があるため、注意が必要です。

参照:国税庁「No.4604 路線価方式による宅地の評価」
参照:国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)」

計算式のとおりに計算する

基本的には「路線価×地積×補正率」で算出します。

【路線価を使用した計算式の例】

路線価20万円×地積100㎡×補正率0.9=評価額1,800万円

倍率地域の場合は「固定資産税評価額×一定の評価倍率」で算出します。

【倍率地域を使用した計算式の例】

固定資産税評価額1,000万円×倍率1.1=評価額1,100万円

複雑な補正や複数の要素が絡む場合は、税理士などの専門家に相談したほうが安心でしょう。

参照:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」

土地の相続税を下げるために利用できる特例

土地の相続税を下げるための特例は以下のとおりです。詳しく見ていきましょう。

  • 小規模宅地等の特例
  • 配偶者の税額軽減
  • 地積規模の大きな宅地の特例
  • 賃家建付地や借地権による評価減

小規模宅地等の特例

居住用や事業用の宅地は最大80%減額できます。相続人の居住状況や利用状況によって適用要件があるため、当てはまるかどうか確認をしておくことをおすすめします。

小規模宅地等の特例の対象となる土地の具体例は、以下のとおりです。

特定事業用宅地等

対象となる土地の具体例としては、以下が挙げられます。

  • 被相続人の個人事業(貸付用を除く)として使用していた宅地
  • 主に個人事業の敷地(※相続開始の直前まで)

限度面積と減額割合は、400㎡/80%となります。

特定同族会社事業用宅地等

対象となる土地の具体例としては、「被相続人とその親族が50%を超える持株を所有する会社の事業に使用していた宅地」(※相続開始の直前から相続税の申告期限まで)が挙げられます。

限度面積と減額割合は、400㎡/80%となります。

特定居住用宅地等

対象となる土地の具体例としては、「被相続人の自宅として使用していた宅地」(※相続開始の直前まで)が挙げられます。

限度面積と減額割合は、330㎡/80%となります。

貸付事業用宅地等

対象となる土地の具体例としては、以下が挙げられます。

  • 不動産貸付業や駐車場業など被相続人などの事業で使用していた宅地
  • 主に貸付事業の敷地(※相続開始の直前まで)

限度面積と減額割合は、200㎡/50%となります。

参照:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

配偶者の税額軽減

配偶者が相続する財産は1億6,000万円以下、または法定相続分以下であれば、非課税になります。土地を相続した場合でも、他の財産と合算して適用可能です。

配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産をもとに算出されます。相続税の申告期限までに分割されていない財産は、税額の軽減対象にはならないことに注意が必要です。

ただし、将来の二次相続を見据えた対策も重要です。なぜなら二次相続においては配偶者が亡くなっているため、配偶者の税額軽減が適用できないからです。

参照:国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」

地積規模の大きな宅地の特例

一定面積以上の広い宅地は、評価額を減額できます。

地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の宅地を指します。

ただし、一定面積以上の広い宅地でも以下のような場所に所在している土地は除外される点を知っておきましょう。

  • 市街化調整区域
  • 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域
  • 指定容積率が400%以上の地域(東京都の特別区は300%以上)
  • 財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地

土地の形状や地域区分によっても減額率は変動します。

参照:国税庁「No.4609 地積規模の大きな宅地の評価」

賃家建付地や借地権による評価減

貸家やアパートが建っている土地は評価額が下がり、借地権が付いている土地も減額の対象になります。

ただし、他の特例と同様に利用実態や契約状況によって評価額が変動します。

参照:国税庁「No.4613 貸宅地の評価」
参照:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」

自分で土地評価を計算する際の注意点

土地評価の計算方法は複雑です。自分で計算する際には以下の点に注意しましょう。

  • 相続税路線価や税率は毎年変わる
  • 土地の形状補正を忘れやすい
  • 地目や利用状況を確認する
  • 複数の権利関係が絡む場合は複雑化する
  • 誤算や記入ミスは追徴課税の原因になる

ここでは、注意点を詳しく見ていきます。

相続税路線価や税率は毎年変わる

古い年度のデータを使うと誤った評価額になりかねません。土地評価額を計算する際には、必ず相続発生日の年度の路線価や税率を確認しましょう。

相続税路線価は毎年7月に国税庁が発表します。対象はその年の1月1日時点の評価です。

なお、相続税路線価は固定資産税路線価とは異なる点には留意しましょう。

参照:国税庁「財産評価基準書|路線価図・評価倍率表」
参照:国税庁「令和7年分の路線価等について」

土地の形状補正を忘れやすい

土地の形状補正を適用しないと、実際より高い評価額になる可能性があります。間口狭小や奥行長大など評価額が下がる土地の形状は把握しておきましょう。

把握しておきたい土地の形状の例は、以下のとおりです。

  • 間口狭小や奥行長大の土地
  • 不整形地や台形の土地
  • 敷地内に高低差がある土地
  • 特別警戒区域内の土地

補正率は国税庁の公表している表を参考に計算します。

参照:国税庁「法令解釈通達|奥行価格補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正)」

地目や利用状況を確認する

宅地や農地、雑種地など、土地の地目によって評価が異なります。

また、登記上の地目と現況が異なると申告トラブルになりやすいため注意が必要です。評価額の計算前に登記上の地目と現況を確認しておいてください。

参照:国税庁「財産評価|土地の地目の判定」

複数の権利関係が絡む場合は複雑化する

借地権や貸家建付地、底地など権利関係によって評価方法が変わります。

素人判断で権利関係を誤ったまま計算してしまうと、大きな税額差につながるため注意しましょう。

誤算や記入ミスは追徴課税の原因になる

土地評価明細書への記入間違いは申告漏れや修正申告につながります。

重加算税や延滞税が課されるリスクもあるため、記入間違いには注意しましょう。不安な場合は、税理士や不動産会社、不動産鑑定士などのプロに依頼するのも1つの手です。

参照:国税庁「事務運営指針|相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
参照:国税庁「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」

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相続税の土地評価については早めの準備が大切

本記事では、相続税の土地評価について詳しく解説しました。相続税は相続財産の評価額をもとに算出される税金です。特に土地は、相続財産の中でも大きな割合を占めることが多いため、税額算出に大きな影響を与えます。

土地評価を計算する際には、面積や路線価、補正率などを調べる必要があります。相続税路線価や土地の形状補正、権利関係などを把握しておくことは評価額の把握には大切です。

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