生前贈与とは?相続税の仕組みや非課税制度の注意点を解説

税金・評価・法令

掲載日:2025年11月05日
生前贈与とは?相続税の仕組みや非課税制度の注意点を解説 イメージ

生前贈与とは、贈与者が生きているうちに贈与によって財産を特定の人に譲り渡すことです。生前贈与は相続税対策の有効な手段の1つですが、不用意に贈与した結果、多額の税金が課せられるケースがあります。

本記事では、生前贈与の概要やメリット・デメリット、実際に生前贈与する際の注意点などをご紹介します。ぜひ参考にしてください。

目次

生前贈与とは?

生前贈与とは、存命のうちに自らの意思で財産を特定の人に譲り渡す行為のことをいいます。相続が発生する前に自発的に自分の財産を移転できることが生前贈与のメリットです。

生前贈与は、民法や相続税法に基づく手続きが必要で、贈与税がかかることもあります。

法律上の「贈与」とは、自分の財産を無償で譲ることを相手に表明し、相手がそれを受諾することによって生じる契約のことです。贈与契約は口頭のみでも成立しますが、後々のトラブルを避けるためには、契約書を作成することをおすすめします。

相続との違い

相続の場合、遺言書がなければ法定相続人に財産が渡ります。生前贈与では、本人が生きているうちに自分の意思で財産を譲る時期や金額、相手を自由に決められますが、相続は死亡によって自動的に発生する点が大きな違いです。

また、生前贈与の場合は親族以外の人に財産を譲ることが可能です。

税金の扱いも異なり、生前贈与の場合は「贈与税」、相続の場合は「相続税」の扱いです。なお、不動産を生前贈与した場合は不動産取得税および登録免許税もかかります。

贈与税の仕組みと課税対象

贈与税は年間110万円を超える贈与に対して課税され、譲り受けた財産の種類や評価方法で税額が変わります。

贈与税の対象となる財産は現金だけではありません。預金や有価証券、不動産、保険金、車など、幅広いことが特徴です。また、現金以外の財産の評価方法は、財産の種類ごとに異なります。

たとえば、土地の場合は路線価方式や倍率方式で評価されます。家屋の場合は、自用家屋は固定資産税評価額で評価され、貸家の評価額は次の計算式で算出します。

貸家の評価額=固定資産税評価額-(固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合)

基礎控除後の課税価格ごとの具体的な贈与税率と控除額は、以下のとおりです。

  • 200万円以下:税率10%、控除額なし
  • 300万円以下:税率15%、控除額10万円
  • 400万円以下:税率20%、控除額25万円
  • 600万円以下:税率30%、控除額65万円
  • 1,000万円以下:税率40%、控除額125万円
  • 1,500万円以下:税率45%、控除額175万円
  • 3,000万円以下:税率50%、控除額250万円
  • 3,000万円超:税率55%、控除額400万円

参照:国税庁「特定贈与財産
参照:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

暦年課税制度

暦年課税制度とは、その年の1月から12月までに受けた贈与に対して課税する基本制度のことで、非課税枠は110万円です。110万円を超過した分については、累進税率で税金が課税されます。

複数の方から贈与を受けた場合でも、年間の基礎控除額は変わらないことに注意が必要です。相続税の基礎控除額と比較すると110万円は少額に思えるかもしれませんが、複数年にわたって財産を移転することで、節税効果を高められます。

なお、暦年贈与で受け取った財産は贈与者が亡くなっても相続税の対象になりませんが、相続開始前7年以内に贈与された財産は相続税の対象として加算されます。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、累計2,500万円までの贈与には贈与税が非課税となり、超過した分に対して一律20%の贈与税が課税される制度です。贈与税の負担軽減と財産の早期移転を促すことを目的としています。

適用対象者は、以下のとおりです。

  • 贈与者は、贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母など
  • 受贈者は、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人または孫

贈与者が亡くなり相続が発生した際に、相続税の課税対象として相続財産に加算されます。制度を利用するためには税務署への届出が必要です。

ただし、贈与税の対象にはならないものの、相続税の対象となる点は覚えておきましょう。

参照:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択

不動産関連の非課税制度

不動産関連の非課税制度としては、父母や祖父母などの直系尊属から自己が居住するための家屋の新築や取得、増改築などに充てるための金銭を受け取った場合、非課税限度額まで贈与税が非課税になる制度があります。非課税限度額は、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外の住宅は500万円です。

また、婚姻期間が20年以上の夫婦間において、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与した場合、基礎控除額110万円にプラスして最高2,000万円まで控除できる特例があります。

参照:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
参照:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

目的別の一括贈与による非課税制度

目的別の一括贈与による非課税制度として、「教育資金の一括贈与」と「結婚・子育て資金の一括贈与」があります。

教育資金の一括贈与とは、受贈者1人につき最大1,500万円までの教育費の贈与を非課税で受けられる制度です。教育資金を贈与できるのは父母や祖父母などの直系尊属のみで、受贈者の年齢や所得に対して一定の制限があります。

結婚・子育て資金の一括贈与は、父母や祖父母などの直系尊属が、子や孫などの結婚資金や子育て資金を贈与する場合、最大1,000万円までが非課税になる制度です。教育資金の一括贈与と同様に、受贈者の年齢や所得に対して一定の制限があります。

参照:国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし

生前贈与のメリットとデメリット

相続税を節税できることや、財産を譲りたい相手に確実に財産を渡せるなど、生前贈与には多くのメリットがあります。計画的に生前贈与することで、相続時のトラブルを回避できる効果もあるでしょう。一方で、申告や手続きの煩雑さなど、デメリットも存在します。

生前贈与のメリットとデメリットについて詳しく解説します。

メリット

生前贈与の主なメリットは、以下のとおりです。

  • 相続税の課税対象財産を減らせる
  • 渡す相手や時期を自由に選べる
  • 評価額が低いうちに資産移転できる
  • 遺産分割時の争いを減らせる

生前贈与によって相続が発生する前に財産を移転させれば、相続が発生した際に課税される対象財産を減らせるため、結果として、相続税の負担を軽減することにつながります。さらに、財産を譲る相手や金額を存命のうちに決められることは大きなメリットといえるでしょう。

また、将来値上がりする可能性が高い不動産などを、評価額が低いうちに資産移転できることもメリットの1つです。生前贈与を計画的に行うことで、遺産分割時の争いを回避できる効果も期待できます。

デメリット

生前贈与の主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 贈与税が相続税より高くなる場合がある
  • 贈与のたびに申告や手続きが必要
  • 贈与後に贈与者の生活資金が不足する可能性がある

まとまった現金を一括で生前贈与する場合などは、贈与税が相続税よりも高くなるケースがあります。税率および基礎控除額を確認し、どちらのほうが節税になるかシミュレーションすることが大切です。

また、贈与税は贈与を受けた金額が年間110万円を超えた場合、少額であっても申告が必要です。毎年の手続きが煩わしく感じることもあるでしょう。

また、贈与後に思わぬ出費が必要になったり、存命期間が長かったりした場合は、贈与者自身の生活資金が不足することもありえます。

生前贈与の注意点

多くのメリットがある生前贈与ですが、生前贈与は方法を誤ると贈与と認められない場合があります。主な注意点としては、以下の3つです。

  • 名義預金
  • 定期贈与
  • 遺留分への配慮

それぞれについて詳しく解説します。

名義預金

名義預金とは、預金口座の名義人と実際に口座を管理している人が異なる預金や、名義人以外の財産が原資である預金のことを指します。具体的には、親が子ども名義の預金口座を管理しているケースなどが該当します。

贈与が成立するためには贈与者と受贈者の双方の合意が必要なため、名義預金は贈与と認められません。

対策として、贈与契約書を作成する方法が有効です。贈与は口頭のみでも成立しますが、双方が合意していることを文書で残しておけば、後々の証拠書類となります。また、名義人に通帳やキャッシュカードなどを渡し、お金を自由に引き出せる状態にしておくことも大切です。

定期贈与

定期贈与とは、あらかじめ贈与する総額を決めて、それを1年ごとに分割して贈与することです。たとえば「1,000万円を贈与することを先に決めて、100万円を10年間にわたって贈与すること」などが該当します。

贈与税の基礎控除額は年間110万円以下のため、毎年贈与契約を結び、それに基づく贈与であれば年間100万円を受け取っても贈与税はかかりません。しかし、定期贈与の場合はあらかじめ取り決めた金額を一度に受け取ったとみなされ、贈与税の課税対象となります。

対策としては、「贈与のたびに贈与契約書を作成する」「贈与のタイミングや金額を毎年変える」などの方法が有効です。

参照:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合

遺留分への配慮

遺留分とは、遺留分権利者に最低限認められている相続分のことです。遺留分権利者とは、被相続人の配偶者、被相続人の子、被相続人の父母を指します。生前贈与によって遺留分の侵害が起きた場合、遺留分権利者は侵害した相手に対して遺留分侵害額を請求できます。

具体例として、「親が特定の子どもに対してのみ不動産を与えた」「親が特定の子どもに対してのみ事業資金を援助した」「祖父母が孫へ高額な生前贈与をした」などのケースがあります。

生前贈与をする際は、特定の相続人に対する贈与だけが過大にならないように、贈与額と他相続人の権利のバランスを考えることが大切です。

参照:国税庁「特定贈与者から贈与を受けた財産について遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定した場合の課税価格の計算

土地を相続した際には土地活用も検討

屋外型トランクルーム

土地を相続した場合、土地活用を検討する方が多いのではないでしょうか。土地活用方法として、トランクルーム経営をすることも選択肢の1つです。エリアリンクのトランクルーム「ハローストレージ」には、以下のような特徴があります。

  • 「10年間一括借り上げ」のため、稼働率にかかわらず安定的な賃料収入が得られる
  • トランクルームの運用・管理も代行してもらえる
  • 初期費用を抑えやすい

トランクルーム経営は少ない初期費用からスタートでき、ほかの不動産経営と比較して管理の手間が少ないことが特徴です。エリアリンクなら、利用者の募集や契約、集金業務、施設のメンテナンスなどもすべて代行します。

【お問い合わせ・資料請求はこちら】

生前贈与は早めの計画と専門家への相談が大切

生前贈与は、贈与者が元気なうちに「誰に」「どの財産を」「どのくらい」譲るかを決められる仕組みであり、上手に活用することで節税効果が期待できます。

一方で、誤った方法で贈与してしまうと、後から多額の贈与税が課せられたり、相続税の課税対象となってしまったりするケースがあるため、注意が必要です。後々のトラブルを防止するためには、早めに計画を立てることと専門家への相談が有効です。

また、生前贈与などで土地を相続した場合、土地活用に取り組むのもおすすめです。トランクルーム経営であれば、初期費用も抑えやすい点が魅力です。トランクルーム経営が気になる方は、ぜひエリアリンクにご相談ください。

【お問い合わせ・資料請求はこちら】

トランクルーム経営ならエリアリンクの「ハローストレージ」

エリアリンク株式会社は、「世の中に便利さと楽しさと感動を提供する」を理念に掲げ、トランクルーム「ハローストレージ」の運営を行うストレージ事業を中心に、ストック型ビジネスで安定性の高い経営を推進しています。

1995年の創業より着実に成長を続け、2003年に東京証券取引所マザーズに上場、2022年には東証スタンダード市場への移行もいたしました。

エリアリンクが展開するトランクルーム「ハローストレージ」は、全国に2,500物件以上・12万室以上を展開しており、業界最大規模、掲載物件数は全国No.1(※)です。

近年、トランクルームの認知度は高まりつつあり、市場規模が拡大傾向にある業界です。駅から遠い、地形が悪い、土地が狭いなどの理由から、マンション・アパート・駐車場経営が困難な土地でも、屋外型トランクルームなら有効活用できることから、遊休土地活用の選択肢として注目を集めています。

土地の活用方法にお困りの場合は、お気軽にお問い合わせください。

※2022年3月期 指定領域(※)における市場調査
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
※屋内型、屋外型の合計掲載物件数・屋外型の掲載物件数において物件数 No.1
※「指定領域」=レンタルスペースの物件数の情報をWeb で公開している 8 社(エリアリンク社独自調査。2022年3月時点のウェブ上での屋内型、屋外型の合計掲載物件数・屋外型の掲載物件数上位8社)を対象として、物件数を No.1 検証調査

<エリアリンク株式会社 公式ホームページはこちら>

桜井鉄郎さん

監修:桜井鉄郎

東証プライム上場の金融機関で主に住宅ローンの相談販売を担当(相談件数:約2,000件)。FPの視点で顧客に最適な返済プランや返済開始後のライフプランを提案。マイホーム購入に関連する法令・税額控除制度等についても説明。